IT業界の多重下請け構造と役割
IT業界の構造といえば「IT業界は多重下請け」というフレーズが良くでてきます。これは間違えであり正確には「IT開発ベンダーの業界は多重下請け構造」もしくは「SIerは多重下請け構造」が正しいフレーズです。
IT業界の中には自社で製品やサービスを展開している「ITサービス事業者」と「ITベンダー」の2種類に大きく分けることができます。「ITベンダー」の中でも「ITサービスベンダー」と「IT開発ベンダー(システム開発ベンダー)」の2種類に大きく分けることができます。ITサービス事業者はBtoCならLINEやメルカリ、BtoBならサイボウズやカオナビ等の一般消費者や会社員等が直接利用するサービスを提供している企業となります。ITサービスベンダーはオラクルやトレンドマイクロ等、システム化に必要な製品等を提供している企業となります。システム開発ベンダーはNTTデータやSCSK等、システム構築や開発を行っている企業となります。
これらをまとめると下記のような図となります。
なお、MicrosoftやAmazon、ソフトバンク等の大手企業はITに関する事業を複数行っているため無理に分類はしません。GAFAや大手通信キャリア等、呼び方はいろいろあります。この辺りの用語は統一されておらず上記の図では「システム開発ベンダー」にも関わらず「ITサービス事業者」と公式に名乗ったり公的なホームページの一覧に記載されているケースも多いです。ここで出した用語は分かりやすく説明するために当サイトが定義したものとなります。
実際に企業でシステム構築、開発を検討する際はシステム開発ベンダーへ依頼をすることがほとんどとなります。システム開発ベンダーは様々な企業があり大きい企業では社員数が数万人、小さい企業では社員数が数人というところもあります。資本金も様々で数兆円の企業もあれば千万円の企業もあります。システム開発ベンダーの業界では大きい企業ほど立場が強く仕事も多いため多重下請け構造ができあがってしまっています。
まず大手企業や税金を大量に投入する国の事業は大きいシステム開発ベンダーへ大規模なシステム構築を委託(発注)します。大きいシステム開発ベンダーはそのシステム構築を何分割化して中くらいのシステム開発ベンダーへ委託(発注)します。こうした再委託が繰り返されて末端企業のところで実際に開発作業が行われます。最初に委託を受ける企業を「元受け(一次受け)」と呼び、元受けから委託を受ける企業を「ニ次請け」、ニ次請けから委託を受ける企業を「三次請け」と数字で呼びます。元受け企業やニ次請け企業はシステム構築の範囲が広く、要件定義や非機能作業を含めたシステム構築します。このような企業をSIerと呼びます。図に表すと下記のようになります。
多重下請け構造では下流へ行くほど委託費用が下がっていきます。これは決して中抜きをしているからではなく二次請け、三次請けと下流へ下がっていくにつれてシステム開発の担当範囲が小さくなるからです。ここでいう範囲はシステム規模もそうですが、役割の範囲も小さくなっていきます。元受け、ニ次請けくらいまでは要件定義やインフラ基盤構築等、システム構築工程全体を実施するが4次請け、5次請けくらいになってくるとコーディングや試験しか行いません。稀にシステム構築そのものを全く切り分けずに下流に委託する丸投げケースも見受けられます。このケースの場合は「中抜き」をしているだけの悪質な企業となります。一般的には下記の図のように下流になるにつれて金額や役割が小さくなっていきます。
多重下請け構造は大手企業や国の事業で発生します。システム規模が小さい場合は2次請けや3次請け企業が元受けとなり下請け構造の層は薄くなっていきます。発注企業はシステム構築/開発の規模に応じて委託する企業のポジションを選ぶのが重要となります
小規模なシステム開発を多重下請け構造の上位に委託すると不必要なコストがかかってしまうので注意してください。システム開発の予算規模と企業の役割を図に表すと下記のようになります。
多重下請け構造の下位層に仕事を任せれば任せるほど委託費用は下がります。代わりにできる役割や保障が小さくなるためバランスが大事となります。
システム構築を考えているがどこに相談すればいいか分からない等がありましたら、まずは見積屋にご相談ください。